- 同価格帯と比べて頭一つ抜けた解像度でオールジャンル楽しめるクリアサウンド
- 再び頂点に登り詰めた至高のノイズキャンセリング性能
- 本体サイズの小型化により長時間の使用でも疲れない抜群の装着感
2023年9月5日に発売されたSONYの新作完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」を購入したのでレビューする。
前作から約2年2ヶ月振りの新作となった「WF-1000XM5」はM3→M4にあったような目立った進化は少なく、どちらかといえば「WF-1000XM4」の弱点の克服に注力しているように感じた。成長は終えて完成度を高めるフェーズだという印象だ。
もちろん元々存在していた音質やノイズキャンセリングという強みに関しては一層磨きがかかっているのでここからしっかり詳細を見ていこう。
完全ワイヤレスイヤホン市場の競争は熾烈化が止まらない!
WF-1000XM5のスペック
項目 | WF-1000XM5 |
---|---|
ドライバー | 8.4mmダイナミック |
Bluetooth | 5.3 |
対応コーデック | SBC,AAC,LDAC,LC3 |
ノイズキャンセリング | ○ |
外音取り込み | ○ |
バッテリー | 単体:最大12時間(ノイキャン使用で8時間) ケース込み:最大36時間(ノイキャン使用で24時間) |
充電端子 | USB-C(3分で1時間使用可能) ワイヤレス充電 |
マルチポイント | 2台 |
専用アプリ | ○ |
防水性能 | IPX4(防沫) |
独自機能 | アダプティブサウンドコントロール スピーク・トゥ・チャット イコライザー ファインド・ユア・イコライザー 360 Reality Audio DSEE EXTREME 最適なイヤーピース判定 |
重量 | 本体;左右それぞれ5.9g ケース:39g |
付属品 | イヤーピース:XS,S,M,L ケーブル:USB-A – USB-C |
発売日 | 2023年9月1日 |
価格 | 41,800円(税込) |
カタログスペックで見ると前作のM4から大きな進化は見られないのだが、ドライバーサイズがM4の6mmから8.4mmに巨大化したのに本体は小型化&軽量化しているというのが不思議で仕方ない。機能面に関してはM4の時点ですでに完成されていたものがそのまま引き継がれている。強みは順当に伸ばしつつ弱点克服に注力した印象だ。
コーデックについてはAptX系の対応はなし、ハイレゾを楽しみたい際はLDACに対応した機種が必要だ。とはいえSONYにはDSEE EXTREMEがあるのでコーデックはあまり気にしなくてもいいと思っている。iPhoneでもハイレゾ相当の音楽を楽しめるので安心して購入してOK。
ただ値段は順当どころか大幅にアップしている。この商品に4万円払う価値があるのかこの記事を参考にご検討いただければ幸いだ。
WF-1000XM5の開封&ペアリング
パッケージ・付属品
環境に配慮された紙のパッケージだ。
中を開けるとさらに紙に守られたWF-1000XM5本体が鎮座。
本体の下には説明書一式とイヤーピース、充電用のケーブルが入っている。ケーブルはそろそろC to Cの端子にしてもいいんじゃないかね。
イヤーピース:XS,S,M,L
ケーブル:USB-A – USB-C
デザイン
本体・ケースのデザインはともに丸みが強く近未来的な印象を受けた。華美さはなくシンプルなデザインで機能美という表現がピッタリ。
本体はちょうど手で持つ部分は光沢仕様で、装着時にタップする部分はサラサラとした非光沢の仕様。マイク部分はM4と同様に真鍮色(?)のアクセントとなっていて高級感を演出している。
デザインだけで言うと特段かっこいいわけではないが、無駄がなく好印象。
サイズ・重量
イヤホン筐体のサイズは他社商品と比べてもやや小さい。この差が耳への負担に大きく影響する。
ケースサイズに関してはTechnicsのEAH-AZ80と同じくらいだ。ポケットに入れて持ち運ぶという観点ではこのサイズ感であれば十分。
重量は5.9gで非常に軽い。Airpods Proシリーズと同等だ。
ペアリング
ペアリングは非常に簡単で、背面のUSB端子の左にあるボタンを長押しするとペアリング待機モードになる。その状態でスマホのBluetooth設定画面もしくは専用アプリの「Headphones Connect」を起動すればペアリングの設定は簡単に完了する。
iPhone
ペアリング待機状態にして専用アプリ「Headphones Connect」からペアリングを行った。超簡単。
Android
Androidの方はペアリング待機状態にするとホーム画面に接続の案内が表示された。こちらも簡単に接続が完了した。
WF-1000XM5の音質
異次元のクリアさと超高音質でオールジャンル聴けるバランスサウンド
とにかく音のクリアさ(=透明感)に衝撃を受ける。抜けが良く透き通った濁りのない美音。あまりの美しい音楽体験に思わず息を呑んだ。
歴代SONYのワイヤレスイヤホンはフラットでモニターライクなサウンドを特徴としてきていたが、WF-1000XM5については「バランスの良さ」という強みを残しながらメリハリのあるサウンド設計となっている。低音は深く沈み、高音は余韻を残しながらしなやかに伸び上がる。
WF-1000XM4は「音源への忠実さ」を大事にしていたが、WF-1000XM5は「音楽を楽しむ」ことの比重を上げている。ロックが大好きな私はM4に迫力の物足りなさを感じていたがM5だと満足できた。
DSEE EXTREMEで音源をハイレゾ相当にスケールアップ
SONYのワイヤレスイヤホンには音質を強化するための独自機能「DSEE EXTREME」が搭載されている。
再生している楽曲をリアルタイムで解析してハイレゾ相当にアップスケーリングするというまるで嘘みたいな機能だ。実際に明らかな音質の向上を実感できた。情報量の多く臨場感のある音楽体験を楽しめる。
ハイレゾ音源をLDACで転送した場合と、AAC接続+DSEE EXTREMEでアップスケーリングした際の音質には正直違いを感じなかった。iPhoneユーザーにも非常におすすめできる機種だ。
膨大な音源データを解析してアップスケーリング処理を行っているとのこと。創業77年の歴史を積み重ねてきたSONYならではの技術!
イコライザー設定でロックも最高に楽しめる
WF-1000XM5は元々メリハリのあるチューニングなのでイコライザーを調整することでロックも最高に楽しめるようになる。
プリセットもたくさんあるが個人的には「ファインド・ユア・イコライザー」を使用して好きな音楽に合わせたイコライザーセットを見つけるのがおすすめだ。私も実際に使用してバンドサウンドを一番楽しめるイコライザーを発見した。
イコライザーはこんな感じにしている。マニュアル設定もできるのでロック好きは是非とも真似してみてほしい。
CREAR BASSと組み合わせてドンシャリ傾向にすることで楽器のサウンドが前面に出てくるようになった、特にドラムの打撃音が非常にクリアに鳴ってくれるのでパンチの効いた音楽を楽しめる。
WF-1000XM5のノイズキャンセリング・外音取り込み
ノイズキャンセリングは現時点の頂点(2023年9月)
非常に強力なのに圧迫感のないノイズキャンセリングだ。これはもう至高の領域に到達したと言って差し支えないだろう。EAH-AZ80やMomentum True Wireless 3よりはワンランク上でBose Quiet Comfort Earbuds 2やAirPods Pro 2と同等という感じ。文句のつけどころがない。
電車の走行音や風切り音など日常生活のノイズを大幅に軽減してくれるので音楽の再生音量を上げる必要がない。ノイズキャンセリングが強いことは耳を守るということにも繋がるので強いに越したことはない。
またノイズキャンセリングの恩恵を最大限享受するためにはフィットするイヤーピースのチョイスが非常に重要なので、「最適なイヤーピース判定」を使用して選んで見てほしい。
私はLサイズを使っているがMサイズだと隙間が生まれて音質もノイキャンも貧弱になってしまう。最適なサイズの使用は本当に重要。
外音取り込みは普通
外音取り込みの性能は普通くらいだ。集音力がやや低めなことと音もそこまで自然ではない。日常生活に支障をきたすことはないがもうちょっと欲しかったなというところだ。
外音取り込みのメインの役割は日常生活でのとっさの会話に対応できることなので、アプリで「ボイスフォーカス」をONにすることをおすすめする。これがあるとそこそこ会話しやすくなる。
ただどうしても気になるのが他社では最近取り入れられている「外音取り込み切り替え時に再生停止する」機能がないことだ。これがないことで、会話するタイミングでは①音楽の再生を止める②外音取り込みに切り替えるの2段階の作業が発生してしまう。煩わしい。
代替の機能として「スピーク・トゥ・チャット」や「クイックアテンション」の2機能があるが痒い所に若干手が届かない仕様になっている。
- スピーク・トゥ・チャット:自分が声を発生すると再生停止し外音取り込みへの切り替えを自動で行ってくれる機能、自宅で鼻歌を歌ったりすると動作して音楽が止まるので煩わしい。
- クイックアテンション:外音コントロール操作を割り当てたイヤホンのタッチ面を長押しすると押している間だけ音量が0になり外音取り込みモードになる。長押しなので発動までに時間がかかって煩わしい。
先進的な機能を試している点は好感を持てるが、やっぱり「外音取り込み切り替え時に再生停止する」は欲しいので是非とも実装してほしい。
WF-1000XM5は使い心地もgood
小型かつ軽量で抜群の装着感
この軽さと小ささはやばい。
音質やノイズキャンセリングを向上させるのにドライバーを大型化させたりマイクの搭載台数を増やしたりしたいはずなのに、まさかの小型化軽量化ということで、SONYの完全ワイヤレスイヤホンはついに最高の装着感も手を入れてしまった。
WF-1000XM3とM4は本体のサイズ感が大きかったためどうしても耳に合わないことや、長時間の装着で耳が痛くなりやすかったりなど課題を抱えていた。進化内容としての派手さはないもののワイヤレスイヤホンとしての格を一層引き上げる素晴らしい進化ポイントだ。
バッテリー持ちも問題なし
- 単体:最大12時間(ノイキャン使用で8時間)
- ケース込み:最大36時間(ノイキャン使用で24時間)
- 3分で1時間使用できる急速充電
ケース含め大幅に小型化したのにバッテリー持ちをキープしており本当に素晴らしい。ノイキャンをONにしても単体で8時間使用できるので十分だ。参考までにAirPods Pro 第二世代が最大6時間なのでWF-1000XM5のバッテリー持ちが非常に優秀だということが分かる。
マルチポイント対応で2台同時接続
もはや2023年においては必須機能と言えるマルチポイントについては、WF-1000XM5においてももちろん搭載されている。2台同時接続で仕事用PCとスマホを繋いでおけば再ペアリングなしに再生ボタンを押すだけで端末を切り替えることができる。そう、神機能だ。
どの端末に接続されているかはアプリを使用すれば一目で分かる。
アプリも使いやすい
アプリ自体もかなり使いやすい。
不自由を感じることはまず無いし不足している項目も特に思い当たらない。Sennheiserのアプリに慣れている人は感動すると思う。ゲームみたいな実績解除システムは全然要らないけどちょっと楽しい。
WF-1000XM5の気になるところ
音質優先だと人混みでそこそこ混線する
Bluetoothの接続品質で「音質優先」と「接続優先」を選択でき、音質優先だとLDAC接続が利用できる。接続優先だとAAC接続になるようだ。
LDACでの接続は混線しやすく人混みだとよく音声が途切れてしまう。接続優先を選択すれば混線はかなり軽減される場合が多い。設定を調整すればある程度解消されるので致命的ではないが油断していると不意に発生する事象なので気になる点として取り上げた。
ツルツルでケースから取り出しにくい
高級感の演出なのか本体の側面が光沢仕上げになっている。ケースから取り出すときにちょうど摘む場所がツルツルしているのでやや取り出しにくい。加えて皮脂がついてペタペタするので個人的にはいただけない。
確かに見た目は良いのだが、4万円もする精密機械なので可能な限り地面に落とすリスクを軽減したいのが正直なところだ。
タップ操作の割り当てが自由に選べない
タップの割り当ては下記の「外音コントロール」「再生コントロール」のセットを左右のどちらに設定するかのみ選ぶことができる。
- 外音コントロール
- 1回タップ:ノイズキャンセリング/外音取り込み切り替え
- 2回タップ:無し
- 3回タップ:無し
- 長押し;クイックアテンション(再生停止と外音取り込み)
- 再生コントロール
- 1回タップ:再生/停止
- 2回タップ:次の曲
- 3回タップ:前の曲
- 長押し;音声入力
デフォルトの設定でそこまで不便は感じないができれば自由に設定できるようになってほしい。
外音取り込み性能は並で使い勝手も微妙
個人的に一番大きな欠点がこれ。
外音取り込み性能は同価格帯と比べてもやや劣っていて、収音力はそこまで高くない上にノイズも若干気になる。「ボイスフォーカス」をONにするとマシになるがそれでもややパワー不足。必要な強さは確保できているので困る状況は少ないがこの点は押さえておいた方がいい。
またとっさの会話において現状の「スピーク・トゥ・チャット」「クイックアテンション」では若干役不足に感じた。意図しないタイミングで発動したり会話を始めるまでにラグがあったりと若干の煩わしさが否めない。
使いやすさを向上させるために独自の機能を開発した点は大変素晴らしく今後の改良が楽しみなのだが、「外音取り込み切り替え時に再生停止する」があれば解決するのでぜひ実装してほしい。
まとめ|音質とノイズキャンセリングが全てを解決する
- 異次元のクリアさと超高音質でオールジャンル聴けるバランスサウンド
- 2023年最高クラスのノイズキャンセリング
- 全体的に使い心地抜群(バッテリー持ち・マルチポイント・装着感)
- 外音取り込みの品質は並でとっさの会話への対応は少し難しい
- 音質優先(LDAC)だと人混みでの混線が多い
- 本体側面が光沢仕上げでで指から滑り落ちやすい
- タップ操作の割り当ての自由度が低い
ここまで色々書いたが総じて「音質とノイズキャンセリングが全てを解決する」というように感じている。外音取り込みなどの細かい欠点はあるものの基本的な品質があまりにもいいのでどうでも良くなった。
4万円超えの超高級イヤホンではあるが音楽が好きにとっては良い買い物になると思う。同価格帯と比較しても一線を画すクリアサウンドをぜひ手に入れてみてほしい。この記事が参考になれば幸いだ。
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