2023年6月15日にTechnicsから発売された「EAH-AZ80」を購入したので特徴と魅力を紹介する。
Technicsは日本を代表する大企業Panasonicのオーディオ専門ブランドだ。長い歴史の中で蓄積された知見と大型資本によって高品質なオーディオ機器を生み出し続けていることで定評がある。
昨今の完全ワイヤレスイヤホン市場は競争が熾烈化している。特に3万円以上のハイエンドラインは年々ハイクオリティな製品が生まれユーザーの期待値も非常に高まっているため、企業側も新製品の発売には大きなプレッシャーを感じていると推察される。
そんな状況で満を持して発売されたのがTechnics「EAH-AZ80」だ。この異常なまでに高まったユーザーの期待に十分応え得る素晴らしい製品に仕上がっている。ぜひ購入を検討されている方は参考にしてみてほしい。
「EAH-AZ80」の概要
項目 | EAH-AZ80 |
---|---|
ドライバー | 10mmアルミ振動板 |
Bluetooth | 5.3 |
対応コーデック | SBC,AAC,LDAC |
ノイズキャンセリング | 対応 |
外音取り込み | 対応 |
バッテリー | 単体:最大7時間(LDAC&ノイキャン使用で4.5時間) ケース込み:最大24時間(LDAC&ノイキャン使用で16時間) |
充電端子 | USB-C |
マルチポイント | 3台 |
防水性能 | IPX4(防沫) |
重量 | 本体;左右それぞれ7g ケース:50g |
付属品 | イヤーピース:XS2種,S2種,M,L,XL ケーブル:USB-C – USB-C |
発売日 | 2023年6月15日 |
価格 | 36,630円(税込) |
カタログスペックは申し分なしという感じだ。詳細を見ていこう。
美麗でミニマムな本体デザイン
高級感抜群なヘアライン加工とロゴ
まず見た目が超かっこいい。タッチセンサー部分のヘアライン加工とロゴが高級感を演出している。今回ブラックを購入したがシルバーもめちゃくちゃかっこいい、これぞハイエンドモデル。
ワイヤレスイヤホンはほぼ毎日身につけるものなので見た目の美しさは重要!
小型なケースサイズ
ケースがめちゃくちゃ小さい。昨年から愛用しているSennheiser「Momentum True Wireless 3」と比較するとこんなに違う。
とにかく小さいのでポケットに入れて持ち歩くのに困らない。このサイズ感は本当に嬉しい。
計算し尽くされた装着感
耳のくぼみにフィットするコンチャフィット形状
今回のEAH-AZ80は装着感についても進化を遂げている。それがコンチャフィット形状だ。コンチャとは耳甲介という耳のくぼみということで、ポコっと本体に丸い膨らみが作られたことで安定した装着感を実現している。
このコンチャフィットのおかげで激しく頭を動かしても取れることはない。ワイヤレスイヤホンという無くしやすいアイテムにおいて非常にありがたい進化だったと言える。
イヤーピースたくさん
EAH-AZ80は付属のイヤーピースが充実しているので、個々の耳のサイズに合わせて最適なものを装着することができる、高級なアイテムなだけにこの辺のケアが丁寧なのが嬉しい。
ちなみに私は耳が大きいのでXLを使用している。
身の回りで一番大きいサイズのイヤーピースを使っている人を見たことがない。
別売:COREIR (コレイル)の金属コア内蔵イヤーピースも相性抜群
少し高価ではあるが、イヤホンの本来の力をより引き出すためにはイヤーピースの付け替えが有効な手段だ。EAH-AZ80にはCOREIRの金属コア内蔵イヤーピースが非常に相性良いのでおすすめしたい。
付属品のイヤーピースでXLの筆者はCOREIRだとLサイズがちょうど良かった。このサイズ感は実際に装着して確かめた方がいいので2サイズセットの購入が推奨。
・中音域の透明感(=抜け感)が高まるのでより歌声が艶っぽく聴こえる
・低音の輪郭がはっきりするので音のボワつきが減る
完全ワイヤレスイヤホン最強クラスの超高音質
クリアで潤いのあるリッチな音
音質は非常にクリアで申し分ない。特徴を一言で表すとすれば「潤い」が良い表現になると思う。
クリア、潤い、密度の高さ、しなやかさ、滑らかさ
ロックを聴くとギターやベースの音は重厚感を増し、ドラムの打撃音は深い沈み込みを感じる。ポップスを聴くと歌はまるで生歌のようなしっとり感があり、思わず聞き入ってしまう。
このEAH-AZ80で宇多田ヒカルのOne Last Kissを聴くと思わず鳥肌が立った。まるで耳元で歌っているかのような質感がある。女性シンガーの歌を聴くことが多い方にはぜひおすすめしたい。
高級有線イヤホンにも搭載されている10mmアルミドライバー
EAH-AZ80の美しい音を生み出しているのが「10mmアルミドライバー」と「アコースティックコントロールチャンバー」「ハーモナイザー」だ。
今回EAH-AZ80に搭載されているドライバーは元々ハイエンド有線イヤホンに使用されていた大型のドライバーだ。ドライバーが大きい=音が良いというわけではないが、この大型ドライバーがいい音を鳴らすための土台となっていることは確かだ。ここにさまざまな要素が噛み合わさることで「良い音」を鳴らすことができる。
EAH-AZ80においてはこの大型ドライバーで鳴らした音を「アコースティックコントロールチャンバー」「ハーモナイザー」と呼ばれる「空間」で絶妙に調整して耳に届けてくれる。これらはコンチャによって生まれたスペースを活用して搭載されている。そう考えるとコンチャは装着感を向上させながら音質向上にも貢献していて一石二鳥だなと思う。
とはいえ私は平凡な耳の持ち主なので、ドライバーによって音がどう変わるかを耳で感じ取ることはできない。
良い音を作り出すためにいろんな工夫を凝らしてるんだなーぐらいに思っておけばOK。
ハイレゾ対応(LDAC対応機種のみ)
EAH-AZ80はLDACに対応している機種と、ハイレゾ対応の音源を組み合わせることでハイレゾ相当の音楽を楽しむことができる。
ただ正直ハイレゾに関してはよく分からない。何回も聴き比べて違いはうっすら感じるけどどっちか当てるのは難しい。ハイレゾや高品質なコーデックによる音質の差分はイヤホン本体のスペックによる音質差分と比べて微々たる差でしかない。普通の耳の人は気にしなくていい。
「iPhoneはLDACに対応してないんだよな〜」と思っている方もいると思うが個人的には安心して買ってOK。
何回も試したけどやっぱりAACで十分。
ノイズキャンセリング&外音取り込みもハイレベル
業界最高峰のノイズキャンセリング
ノイズキャンセリングはシンプルに超強力。
電車の走行音も気にせず音楽を楽しめる、また耳が詰まったような感覚もないので自然のノイズキャンセルと言える。専用のアプリで強さを調整することができるがとりあえず最大にしておけばOK。
ノイズキャンセリングに関してはもうこれ以上進化しなくても良いんじゃないかと思えるくらい十分な性能だ。家電屋で現在ノイキャン最強のBose「QuietComfort Earbuds II」と聴き比べてみた。確かにBoseの方が強力ではあるけど遜色ないラインまで来ているように感じた。
会話が快適な外音取り込み
外音取り込みも強力。やや機械音っぽさはあるが十分に実用的。
「トランスペアレント」と「アテンション」2つのモードを用途に合わせて切り替えることができて便利。
- トランスペアレント:マイクに入った音をそのまま取り込む。そこそこ自然。
- アテンション:会話を強調して取り込む。オンにすると再生を停止してくれる。やや電子音っぽい。
「アテンション」の音楽を止める機能がかなり便利。ノイズキャンセリングして音楽を聞いている最中に話しかけられた時、外音取り込みをオンにすれば音楽を停止した上で、声を強調して取り込んでくれるので自然に会話できる。スーパーでお会計する時に特に便利。
十分なバッテリー持ち&ワイヤレス充電対応
本体もちょうどいいサイズ感でケースは小型なのにバッテリー持ちは十分にいい。私はかなりがっつり使う方だがケースのバッテリーも含めると2日は使える。LDACをオンにするとバッテリーの消費が激しい点は要注意。
完全ワイヤレスイヤホンのバッテリー持ちは単体7時間が一つの基準になると考えている。7時間保てば十分快適に使用することができる。
そしてEAH-AZ80はワイヤレス充電にも対応している。2年前に販売されたEAH-AZ60には搭載されていなかったのでこれも嬉しい進化と言える。いちいちコードを準備しなくても良いのは素晴らしい。
全体的に快適すぎる(マルチポイント・接続性・防水性能・アプリ)
業界初3台のマルチポイント
スマホ、タブレット、PCの3台に同時接続して使える。
私の場合タブレットがないので2台で十分ではあったが、これは痒い所に手が届く進化だったのではなかろうか。ただ3台だとLDACが使用できない点は注意。
マルチポイントは本当に神機能で、一度接続したら再生ボタンを押すだけで端末を切り替えることができて毎日重宝している。
マルチポイントは完全ワイヤレスイヤホンの必須機能になりつつある
安定した接続性と低遅延モード
Bluetooth5.3によって安定した接続性となっている。満員電車に乗っていたらたまに途切れることはあるが支障はない範囲だと思う。
また接続傾向を「自動」「途切れを抑える」「遅延を抑える」の3つで切り替えることができる。普段は自動で問題ないが、人が多い環境下で電話するときは「途切れを抑える」を、ゲームをするときは「遅延を抑える」を選択することである程度快適に使用できる。
低遅延モードでも音ゲーは正直難しいのでご注意を
IPX4の防沫性
IPX4はいわゆる生活防水だ。濡れた手で触ってもOK、汗かいてもOK、軽い雨もOK、水に沈めたら壊れる。カナル型イヤホンは耳の中が蒸れるという人も多いと思うが、その点故障の心配はなさそうだ。
アプリがめちゃくちゃ使いやすい
バッテリー管理や音質の調整、ノイキャン外音取り込みの設定などをするために使うのでダウンロードは必須。アプリ自体は他社製品と比べても非常に使いやすい上に、大元がパナソニックということで自然な日本語なのが地味にありがたい。
アプリ内では外音コントロール(ノイズキャンセリング)、イコライザを自由自在にカスタマイズできる。EAH-AZ80はイコライザ「ダイレクト」モードが存在する。これは従来のイコライザ機能では起きていた僅かな音質劣化を無くしたものだ。
自分にとってベストなカスタムを探す作業って楽しいよね
また接続方法やマルチポイントの設定、遅延や音切れ抑制の設定も細やかにできるので他社製品と比べてアプリの完成度がとっても高い。LDACに繋がっているかどうかをアプリ上で確認できるのも便利。
同価格帯のSennheiser「Momentum True Wireless 3」と比較
音質:引き分け
ぶっちゃけ想像通り。同価格帯のイヤホンでそこまで差は出ないと思っていたが案の定だった。
「Momentum True Wireless 3」はAptX-Adaptiveに対応、「EAH-AZ80」はLDACに対応ということでそれぞれ対応している端末でハイレゾロスレス音源を視聴してみた。
音の傾向の違いは確かに感じるがどちらが音質がいいかと問われると正直わからない。同じくらい。傾向の違いは以下のような感じだ。
- EAH-AZ80:潤い、密度の高さ、しなやかさ
- Momentum True Wireless 3:華やかさ、伸びの良さ、メリハリの良さ
どちらのイヤホンも良い音なので基本的にオールジャンルを楽しめると思う。とはいえ音の傾向の違いによって得意な音楽というものはある。
- EAH-AZ80:ポップスに強い(女性シンガーの歌声を楽しみやすい)
- Momentum True Wireless 3:ロック、ジャズ(メリハリがあるので楽器の強い音楽を楽しみやすい)
私はロックやメタルを好んで聴くので、「Momentum True Wireless 3」の方が好き。スナップ感のあるメリハリサウンドが聴いていて心地よい!
ノイズキャンセリング:EAH-AZ80の勝利
そもそも「Momentum True Wireless 3」のノイズキャンセリングが同価格帯の中ではやや劣っているので当たり前な気もするが、ここは明確にEAH-AZ80の方が優秀だと感じた。どっちも十分に良いんだけど。
外音取り込み:Momentum True Wireless 3の勝利
ノイズキャンセリングとは逆に外音取り込みの性能については「Momentum True Wireless 3」の方が優秀だ。「サー」というホワイトノイズこそあるものの広範囲に聞き取りやすく音を拾ってくれる。どっちも十分に良いんだけど。
使いやすさ:EAH-AZ80の勝利
- EAH-AZ80:ケースサイズ、アプリの使いやすさ、付属品の充実さ
- Momentum True Wireless 3:イヤホン本体のサイズ、ケースの質感
特にEAH-AZ80のケースサイズはかなりコンパクトでMomentum True Wireless 3と比べて70%ほどしかない。ポケットに入れて持ち運ぶことを考えるとこのアドバンテージは非常に大きい。
またMomentum True Wireless 3については結構壊れやすく、1年間の使用ですでに2度修理に出しているのでこの点が大きなビハインドだ。EAH-AZ80の方はまだ分からないが壊れないことを祈っている。
使いやすさの総合点に関してはEAH-AZ80の圧勝だ。素晴らしい。
完全ワイヤレスイヤホンは使いやすさが本当に重要。EAH-AZ80は至高の領域。
総評:どちらかと言えばEAH-AZ80がおすすめ
トータルで見るとEAH-AZ80がおすすめではあるのだがどっち買っても満足できると思う。同じ価格帯の時点で大きな差はない。
押さえておくべき欠点
明確な欠点はこれと言って特にない。フラットな目線でレビューしたいので何か言いたいけど何もない。
強いて言えば、外音取り込み機能はAirPods ProシリーズやMomentum True Wireless 3には及ばないので今後に期待したいという感じ。あとは完璧。
まとめ:EAH-AZ80は2023年最強候補の完全ワイヤレスイヤホン
過熱している完全ワイヤレスイヤホン市場にトドメを刺さんばかりの完成度で登場したEAH-AZ80。
36,630円という高価なアイテムではあるが十分にその値段の価値を感じられる一品になっていると感じた。購入して後悔はしないと断言できる。現段階で検討されている方は是非とも購入してみてほしい。そしてこの極上の音楽体験を楽しんでほしい。
今年はSONY「WF-1000XM5」の登場も噂されていることから完全ワイヤレスイヤホン市場は一層盛り上がっていきそうだ。
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